当院の治療における理論
【 序 論 】
はざま治療院の患者さんは後遺症を持たれている方がほとんどです。
そして、その患者さんのほとんどが後遺症状を改善したい・軽減したいと考えていらっしゃいます。
筋力の低下、関節の拘縮やマヒ、痺れや痛み、動かしにくさ・感覚鈍麻などその症状は多岐に亘ります。
元来、東洋医学である鍼灸・マッサージは筋肉や神経への刺激を得意とする分野で、後遺症状へのアプローチとしては最適であると言われています。
しかし、筋肉を揉む・押すだけのマッサージや刺すだけの鍼治療で後遺症状の改善を目指せるでしょうか?
答えはノーです。
はざま治療院では東洋医学の『鍼灸・マッサージ』+『運動法』を組み合わせる事で効果を最大限に引きだし、結果をだせると考えています。
運動法は筋トレで筋力増強を目指すだけでなく、さらにもう一歩踏み込んで体の3部位に着目した独自の運動方法でアプローチしています。
それが
①中脳
②中殿筋
③足関節
の3部位です。
この3部位へのアプローチは、はざま治療院開院当初から変わらない屋台骨となる考え方です。
次回から各部位の働きとつながりを一つずつ紹介していきます。
1. 中 脳
まずは中脳の働きついて簡単に紹介します。
中脳とは、脳幹(中脳・橋・延髄・間脳)を構成する一部位で、視覚や三半規管からの感覚情報を大脳に伝え、体がどういう状態にあるのかを判断する器官です。
そして、ここでもう一つ重要なのが『小脳』で、中脳の感覚情報と大脳から筋肉に向かう運動指令を統合してなめらかな運動を実現する器官です。
中脳が、身体が「どのような状態」にあるのかを把握して、小脳が筋肉に「このように動きなさい」という指令を出すイメージです。
中脳と小脳の機能は脳梗塞やパーキンソン病、長期寝たきりなどで障害される事があります。体の異常な傾きを大脳に伝える事ができない、筋肉への指令がうまく伝わらない事で転倒や姿勢の崩れに繋がります。
中脳と小脳の機能を説明しましたが、はざま治療院では中脳へのアプローチを重視しています。中脳は病気による障害だけでなく、加齢によっても機能が低下しやすいからです。
また、小脳を意識しなくても中脳のトレーニングは小脳にも良い影響を与えます。 当院ではこのトレーニングを【バランス訓練】と呼んでいます。
中脳の機能が低下した方は、姿勢が崩れているのにそれに気づく事が出来ません。
筋肉を鍛えても姿勢の崩れや歩行の不安定が改善しない場合は中脳の働きが弱くなっているかもしれませんね。
豆知識:●中脳の働きや特性の覚え方●
中止(中脳、視覚)隊長(体の平衡、聴覚)の姿勢(姿勢反射)
2. 中殿筋
次は中殿筋です。
中殿筋はお尻の側面側についている筋肉で座位・立位で骨盤を支える役目を果たしています。
高齢者では筋力低下、後遺症では筋マヒなどで機能低下を起こしやすく、中殿筋の機能低下は骨盤の不安定さを招きます。
骨盤が不安定になると体を支えられず、傾く・倒れるなど、姿勢が崩れます。
生活をする上で食事・入浴・排泄という要素は必ず必要になります。これらの行為は「安定した座位」または「一人で座る事ができる」とより快適になります。
また、中殿筋は歩行中や片足立ちの時にも、骨盤を支持するという重要な役割を果たしています。
中殿筋は、寝たきり→座る→立つ→歩く、の動作のステップアップに欠かせない筋肉です。
この中殿筋を鍛えるのにも活躍してくれるのが【バランス訓練】です。
中脳の機能回復ができても、骨盤の支えがなければ体は安定しません。
中脳・中殿筋は一緒に強化していくとバランス力は劇的に向上していきます。
そして次回は、「足関節」についてのお話をします。
中殿筋と共に体を支える要になる部分ですね。
3. 足の関節
足の後遺障害として現れやすいのはアキレス腱と足趾の拘縮です。
ここが拘縮すると足底が地面に完全接地できなくなる場合が多いです。
足底は地面に接地する事で体重を支え、歩行時は地面からの衝撃吸収と歩行の推進力を生みだします。
足底が接地できなくなることで立位や歩行に甚大な影響を与え、座位の不安定さをも招き、寝たきり状態に陥りやすくなります。
寝たきりで使われなくなった関節は、拘縮が進行し関節可動域の回復見込みは低くなっていきます。
拘縮が軽度で歩行ができる方も、ペンギンのような歩き方になります。
足首の招きがなくなり、踵で歩くような状態です。
踵での離着地は膝・股関節への衝撃が大きく、関節の負担になります。
この歩き方を続けていると、将来的に関節の変形や痛みを引き起こして歩行が困難になっていきます。
そして重心の位置は後ろになりますので、後方への転倒リスクが大きくなります。
麻痺・拘縮が無い方も、足の指をぎゅっと握った状態で歩いてみると拘縮状態を体感する事ができますよ。
ここでも【バランス訓練】は力を発揮します。
はざま治療院が行っているバランス訓練は座位でも・立位でもでき、寝たきりの方にも施術が出来ます。
足底がしっかり地面につけられるかどうかで生活の質(QOL)は大きく変化します。
【 結 論 】
はざま治療院の治療の三つのポイント
① 中脳
② 中殿筋
③ 足の関節
これらをすべて総合する事で、
寝たきり状態→軽介助で起き上がり可能→車いすへ移乗→リビングで座っての食事 →車いすからの立ち上がり→立位時間の延長→歩行動作の獲得→……
と、段階的にADLを上げることができます。
進行性のご病気の方においてはこのADLが徐々に低下していきます。
状態を維持すること、進行を緩やかにしていくことも私たちの役割です。
あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう これらの技術ももちろん大切にしております。
私たち治療師の根幹であるこれらの技術に、はざま治療院の三つのポイント理論を合わせることで大きな効果を発揮している事は、地域に密着した治療を行ってきた25年の歴史が物語っていると自負しております。
これまでも、そしてこれからも後遺症に悩む方のお力になっていきたい一心で走りつづけています。
「座れるようになったおかげで、桜を見に行けた」
「お父さんと同じ食卓を囲むことができるようになった」
など、患者様・ご家族様の喜びの声が私たちの力になっています。
学生様に向けて、これらの理論を学問に寄せた形での「つくし塾」という講義活動も行ってまいりました。
地域の皆様に密着して、ADL(日常生活動作)のみならずQOL(生活の質)を上げることができる治療院として、根差していきたいと思います。